第9回報告

「2003年地下水コロキュアムin岡山」
〜豪雨時の斜面崩壊予測及び切土斜面の安定性評価講習会〜

(地盤工学会中国支部講習会)
(岡山地域セミナー2003年第9回斜面安定講座 吉井町現場実験報告会)

 

主催:地盤工学会中国支部
共催:岡山大学地域共同研究センター

 

会 告

【概  要】

 平成15年12月8日(月)(15:00〜19:00)に岡山大学創立50周年記念館 2F会議室を会場に開催された。内容は豪雨時の斜面崩壊予測について現在の研究状況の紹介,また,降雨の斜面への浸透の定量的な取り扱い方や安定性の評価に対して講習を行った。また,現場での調査結果と安定性の評価結果について報告した。

スケジュール:

<時間>

<内容>

<講師>

15:00-15:05

  

開会挨拶

西垣 誠(岡山大)

15:05-16:05

特別講演

北村良介(鹿児島大)

16:05-16:15

<休憩>

 

16:15-17:05

斜面崩壊予測のために何が必要か?

西垣 誠(岡山大)

17:05-17:15

<休憩>

 

17:15-17:30

吉井町現場調査報告@ <地質状況><現場密度測定>

与那城稔(ウエスコ)

17:30-17:45

吉井町現場調査報告A <調査目的・内容><水分量測定>

小松 満(岡山大)

17:45-18:00

吉井町現場調査報告B <地下水位測定,物理探査>

吉田 誠(荒谷建設コンサルタント)

18:00-18:15

吉井町現場調査報告C <物理探査>

科野 健三(応用地質)

18:15-18:30

吉井町現場調査報告D <今後の実施事項>

吉田 庄太(エイトコンサルタント)

18:30-19:00

フリーディスカッション

【詳  細】

1. 特別講演

 鹿児島大学工学部の北村 良介教授により「表層すべり型斜面崩壊予知への総合的アプローチ」と題して行われた。
 まず,斜面崩壊予知システムのフロー図が紹介され,その中での土粒子と間隙のモデル化によるアプローチ,飽和・不飽和浸透特性,粒子間力に起因する見掛けの粘着成分の算定,粒子間力の算定について講義が行われた。その中で表層すべりにおいては,見掛けの粘着力は崩壊時に数kPaの変化しかない,つまりこの微妙な変化で崩壊したりしなかったりすることが強調された。次に,有限要素法を用いた2次元不飽和・飽和浸透解析,Janbu法による安定解析例が示され,特にサクションの経時変化において崩壊前に一定となる部分(3kPa程度)があることが示された。また,ミニコーン(3成分コーン)を用いた潜在すべり面の同定,崩壊確率の算定について講義が行われた。崩壊確立については,確率変数(c,φ)の二次元正規分布を用いたアプローチが説明された。
 次に,降雨時の安定性評価に対する崩壊確率の適用例が示され,多くの具体的な試験結果,解析結果が紹介された。その中で,サクションと提案するモデルは現状では一致していないが,もし一致する場合は,現場での計測は温度と雨量だけで良いことが示された。また,現場計測システム図が説明され,携帯電話の寿命は5年程度であり,継続使用には注意が必要であることが示された。
 最後に,鹿児島県で進められている産官学が連携した地域連携防災システム作りが紹介された。

北村良介教授(鹿児島大学工学部)による特別講演

2. 講演

 岡山大学環境理工学部の西垣 誠教授から「斜面崩壊予測のために何が必要か?」と題して講演が行われた。まず,近年の大災害を挙げ,防災⇒減災⇒避災への方向転換が重要であることが示された。そして,情報化社会への変化に基づき,情報のリアルタイムの通知システムが必要であり,これには宇宙や地上,地中での多数の情報の計測システムの開発がポイントになることが示された。
 そして,降雨の斜面への浸透挙動の予測のために必要な項目として,(1)斜面内の3次元の地層構成の調査,(2)浸透に関する物性の調査,(3) 地中の水分分布状況の調査,(4) 降雨のデータの分布,(5) 降雨のない時の蒸発散量のデータ,(6) 浸透解析のための境界条件,(7) 数値解析プログラムを挙げ,それらについての具体的な説明が行われた。次に,斜面の不飽和土の力学特性の解明として,(1)各層の粘着力と飽和度の関係,(2)各層の内部摩擦角,弾性係数,ポアソン比,(3) 斜面の3次元の浸透流解析+斜面の3次元の力学挙動解析,(4)斜面崩壊の予測の各項目について示された。さらに,斜面安定のための計測システムとして,(1)斜面がどのような状況になったら崩壊するかを数値解析で予測すること,(2)その時の計測項目,そして,土中水の変化の計測から崩壊の予測として,(1)間隙水圧の計測,(2)水圧の計測,(3)土中の水分変化の計測(TDR , ADR , FDR , RI)が示された。
 最後に今後の課題として,(1)負の圧力水頭の長期計測システムの開発,(2)地中の間隙空気の影響の評価,(3)地中の水分量の変化が少ない場での評価が取り上げられ,また現在実施されている現場試験についての経緯,概要についての説明が行われた。

西垣誠教授(岡山大学環境理工学部)による講演

3. 吉井町現場調査報告

 5名の担当者により,中間報告として調査データ,今後の実施項目が示された。

4. フリーディスカッション

【質疑応答】C:コメント,Q:質問,A:回答

C1:

斜面崩壊の予測として,何が指標になるか?@力学挙動が弱くなる,A不飽和から飽和になり,浸透水圧が発生する。崩壊する前にこれらの挙動が分からないか?(西垣教授:岡山大)

C2:

水分量の変化からは,今回の観測結果らも判るように,厳しい(小松助手:岡山大)。

C3:

地盤の粘性が高いと空気侵入値,サクション,つまり,水分特性曲線が重要であり,あらかじめ調査しておくことが必要である(北村教授:鹿児島大)。

C4:

テンシオメータは,1ヶ月に一度はメンテナンス(脱気水の調節,センサー自体のメンテナンス)が必要である。また,5年に一度程度セラミックの部分にカビが生える時もあるのでフラッシングも必要である(北村教授:鹿児島大)。

Q1:

 

広島でも同様の観測をしていたが,崩壊に伴うこれらの観測値の反応挙動は捉えられていない。本来,沢筋が危険箇所になる場合が多いが,今回の観測は主に尾根筋に観測機器が設置されているのはなぜか?測定する前に水分特性などの地盤状況を調べた上で設置箇所を選ぶ必要がある(上熊氏:応用地質)。

A1:

沢筋は常に飽和に近いため反応が出にくい。尾根付近で反応のピーク値が出た時点が最も危険ではないか?(小松助手:岡山大)

Q2:

今回,全層ストレーナーで地下水位が測られているが,正確な値か?広島の斜面でも土壌水分計と共に地下水位も測ったが,下の水位が上がってくる挙動は観測されている。これは下の崖錐部分の地下水が上とは切り離されており,2枚の地下水位がある可能性が示されている。しかし,このような現象は斜面によって異なるため,一概には言えないのでは?(上熊氏:応用地質) 岩盤の割れ目に湧水する地下水の挙動が影響しているのでは?(北岡教授:岡山理科大)。

A2:

層ストレーナーを部分的に区切る方法の検討が必要である。当該地も大きな沢に閉塞されており,沢の影響を受けている可能性も考えられる(吉田氏:荒谷建設コンサルタント)。C線では,2枚の地下水層がある。これは,N値の分布で3m〜4m部分に密度が低い層があり,孔内に湧水が認められたことによる。段丘堆積層であり,沖積→洪積の違いの影響を受けている。今後,細かく見る必要がある(与那城氏:ウエスコ)。

Q3:

強度定数で内部摩擦角が36°と非常に高いが,本当にこのような値か?換算値の精度は?(植田氏:阪神コンサルタンツ)

A3:

軟岩が含まれているのも要因か?データを増やしていく必要がある。地表に近ければ,35°程度は見込んで良いのか?道路仕様書での換算式は一般的に低い値を与える(与那城氏:ウエスコ)。

C5:

CD三軸試験では一般的に強度は高く出る傾向がある(植田氏:阪神コンサルタンツ)。

Q4:

水位データにおいて,2,3年の長期データを取る必要があるのでは?このような場合は,季節変動がほとんどである。BP-1では2,3時間のほぼリアルタイムで反応が出ており,本当に地下水位を測っているのか?(植田氏:阪神コンサルタンツ)別の現場では後背地に大きな沢があり,これに連結している場合もあった(北岡教授:岡山理科大)。

A4:

C線は2本のボーリングを掘っており,この地点でも水位観測を行う(与那城氏:ウエスコ)。

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